今年の干支は巳。蛇は脱皮して成長することから、巳年は〝変化の年〟と言われている。しかし、今年65歳になる身として、ことさら変えたいものはないし、また長年の習慣から、そう簡単に変われるものではない。身の周りのことについても、あまり変わってほしくないというのが正直な気持ちである。
それでも、世の中は次々と変わっていく。買い物一つとっても、セルフレジやスマホ決裁。二十代の息子は当たり前のように行っているが、昭和生まれの筆者には戸惑うことばかり。家電製品の設定に関してサポートセンターへ問い合わせようとしても、チャットへ誘導され、すんなりとオペレーターと直接、電話で対話することができない。
コスト削減のため、あらゆる場面で人が減らされていく。自分が若かった頃のような人との対面販売が当たり前だった時代が無性に懐かしい。筆者のように、世の中の変化についていけない人は、この先どうなるのだろうか。
その点、蛇は環境に合わせて変化した究極の生き物であろう。草藪や地中を移動するのに脚は邪魔になることから退化して、あのような姿になった。なるほど、脚を残したトカゲに比べて草藪をスムーズに移動することができるだろう。その代わり失ったものもある。これは人間だけが思うことであるが、脚をなくした代償として、あのグロテスクで気味が悪い姿になってしまった。その結果、「蛇蝎」という言葉が象徴しているように、蛇は忌み嫌われる存在になってしまったのである。
反対に、かつて地球上を支配していた恐竜は、環境の変化に対応できずに滅んでしまった。しかし、滅んでしまったがゆえに、後世の我々にロマンを掻き立ててくれる存在になっている。忌み嫌われるよりも、よっぽど良いではないか。
変化することを全て拒絶しているのではない。しかし、「不易流行」という言葉があるように、いくら環境が変わっても、変えてはならないこともあるのである。