八重洲ブックセンターが2023年3月31日をもって営業を終了した。所在する地区の再開発計画に伴い、一旦、営業を終了し、再開発事業で建設される超高層大規模複合ビル(2028年度竣工予定)で新たに出店する計画だという。
同ブックセンターは、鹿島建設社長・鹿島守之助の「どんな本でもすぐ手に入るような書店が欲しい」との遺志を受け継ぎ(Wikipediaより)、八重洲にあった同社旧本社跡地に、売り場面積約2,470平方メートル、在庫数120万冊という日本最大の書店として、1978年9月18日に開業した。1978年といえば、筆者が高校三年生の頃である。確か物理の授業で実験をしていた時(それゆえ、授業中でも雑談ができた)、本好きなクラスメートが東京に八重洲ブックセンターという日本最大の書店が出来たと話していたのを今でもよく覚えている。
東京駅の表玄関という土地柄、都内に勤めるビジネスマンだけでなく、出張帰りのビジネスマンや観光客の多くが利用していた書店である。筆者も東京へ出張したおり、帰りの新幹線に乗るまで時間に余裕があるときは、八重洲ブックセンターでよく時間を潰したものだ。そればかりか、筆者は1998年から2001年までの3年間、都内の科学技術系機関へ出向していたので、その間は一月に一回のペースで行っていた。
その頃、筆者は絵を描く趣味に目覚め、休日には、単身赴任のワンルームアパートの部屋で写真を見ながら城の絵を描いていた。絵を描くようになると、絵画技法や画集に興味を持つようになり、当時、ブックセンターの7階か8階にあった美術書コーナーをよく覗いたものだ。
2028年に竣工される大規模複合ビル内で再開する計画があるらしいが、筆者にとっての八重洲ブックセンターは、出張帰りの新幹線待ちで立ち寄った、あるいは東京での単身赴任中に通った、コーナーガラスが丸みを帯びた、中2階にコーヒーショップがあった、あの八重洲ブックセンターである。44年の歴史に幕を閉じて、それがなくなった今、梅田にあった旭屋書店が閉店したときと同じように、一抹の淋しさを覚える。