映画「ひまわり」について

 イタリアを代表する名優、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが共演した映画「ひまわり」がリバイバル上映されていたので、観に行った。

 第二次世界大戦下のイタリア。アントニオとジョバンナの新婚夫婦は、夫を戦争に行かせないために、アントニオの精神がおかしくなったような狂言芝居をうつ。しかし、それが嘘と分かって、アントニオは、懲罰として過酷なソ連戦線に送られてしまった。やがて戦争が終わるが、アントニオの生死は不明。夫は生きていると信じるジョバンナは、夫を探すためにソ連に出向く。鉄のカーテンの向こう側を象徴するような赤の広場、見渡す限り一面に広がったひまわり畑(このひまわり畑のロケ地はウクライナだという。ちなみに、ひまわりはウクライナの国花である)など、ソビエトの風景が印象的である。ようやく夫の居所を探し当てたジョバンナが見たのは、アントニオの命を救ったロシア人女性と結婚して、幸せな家庭を築いている元夫の姿だった……。

 戦争で引き裂かれた男女の哀しい愛を描いた、世界中が感涙した名作である。日本でも大ヒットし、1970年の初公開以来、何回かリバイバル上映されている。そして2022年、ロシアから侵攻を受けているウクライナを支援するため、全国各地の映画館で再びこの映画が上映された。

 筆者は、これで合計4回観たことになる。最初は公開の年。当時、小学4年生だった筆者は、SL(蒸気機関車)好きな父親に連れられてこれを観た。この映画には、出征兵士の見送りや出迎えの舞台となるミラノ中央駅、夫に妻子がいることを知り、ジョバンナが逃げるように汽車に飛び乗ったウクライナのとある村の駅、そして、アントニオとジョバンナの永遠の別れとなるラストシーンなどでSLが出てくるのだ。肝心の映画の方は、まだ十歳だった筆者には男女の感情などがよく理解できず、退屈だという印象しかなかった。

 二回目は中学生か高校生の頃、テレビの洋画劇場(当時は、このような番組があった)で放映されていたのを観た。さすがに、その頃になると映画の内容は理解できた。

 三回目は大学生のとき、付き合っていた女性とのデートで観た。映画を観終わった後、「どちらの女性がタイプ?」と彼女が尋ねてきたのをよく覚えている。

 この映画は、ソフィア・ローレン演じる気性の激しい情熱的な南国女と、リュドミラ・サベーリエワが演じる可憐で物静かだが芯の強そうな北国女という、対照的な女性のタイプが描かれている。筆者の好みは後者なので、彼女にそのように答えた。

 あれから40年。当時、付き合っていた彼女とはその後、別れ、筆者は別の女性と結婚している。結婚した相手は、よく笑い、よく喋り、怒ると機関銃のようにまくし立てる女性だ。映画で観たロシア娘のようなタイプではなかった。……4回目の「ひまわり」を観て、そんなことを思った。