本棚を見れば、人が分かる

「類は類を呼ぶ」という言葉があるが、その人のことを知りたければ、その人の友達を見るとよい。

 同じように、本棚も、その人のことを知るに役立つ。どのような本が並んでいるかで、その人の関心や趣味嗜好、立場などが分かる。例えば、釣りに関する本が多ければ、その人が釣り好な人であることは容易に想像がつく。経営者やスポーツ選手の成功談、リーダー論に関する本が多ければ、その人は何かプロジェクトや人を束ねる立場の人であろう。逆に自己啓発や心の癒しに関する本が多ければ、その人は何か悩みを抱えており、本を通じて、それの解決を求めているのかもしれない。……本棚は、持ち主の人となりを体現する。

 そういう観点で、自分の本棚をあらためて眺めてみた。そこに並ぶ本は、大きく分けると、次のカテゴリーに分類することができる。

①海外のスパイ小説

②スパイに関するノンフィクション

③書評、文学論、本に関するエッセー

④海外のミステリ小説

⑤歴史小説

⑥落語に関する本

⑦その他(ごく一部の日本文学や海外文学、軍事や自衛隊に関する本など)

 ①②はスパイ小説をホームページで紹介している筆者として当然のことであろう。書評を書くので、③についてもよく読む。スパイ小説の延長線上で④も好きだが、筆者の好みは謎解きものよりもサスペンスものの方である。中高年の男性なら、⑤を一冊も読んだことがないという人はいないだろう。落語は、スパイ小説やミステリ小説を読むこと以外のもう一つの筆者の趣味なので、⑥に関する本も並ぶ。⑦に関して、いわゆる古典や名作といわれる作品は、時代や場所を越えて読者の心を深く突き動かすので、人生の残り時間を考えると、今後は新刊の小説よりも、読みこぼしている名作を読んでいきたい。軍事や自衛隊に関する本は、筆者が若い頃の一時期、海上自衛隊にいたこともあって、関心がある。

 このような筆者の本棚であるが、読者はあることに気づかないだろうか。会社勤めをしている男性(昨今は男性だけに限らないが)なら当然、読んでいるビジネス書の類が、仕事上、必要に迫られたものを除いて、殆どないのである。元々、ビジネスで成功することや出世することに関心が薄かったこともあるが、多くのサラリーマンがお酒によって会社での嫌のことを忘れようとするのと同じように、筆者は小説を読むことによって、しばし現実を忘れることを求めていた。だから、わざわざお金を払ってまでビジネス書の類を買い求めることはなかったのだ。読むのは、おのずと、現実の日本のビジネスシーンとは縁遠い海外のスパイ小説やミステリ小説だったのである。

 以上が我が本棚から読み取れる筆者の趣味嗜好や人となりであるが、果たして、読者はこんな筆者とお近づきになりたいと思うであろうか。