文庫本の魅力

 単行本より文庫本の方が好きである。同じ作品で単行本と文庫本がある場合、後者を選ぶ。また新刊の単行本が発売された場合で、いずれ文庫化されるであろうと思われる作品の場合、文庫本になってから買い求める。なぜ文庫本の方を選ぶのか。今回は文庫本の魅力について述べたい。

①携帯に便利

 筆者は朝夕の通勤電車内で本を読むのが習慣になっている。カバンから取り出すとき、あるいはツリ革を握りながら空いている方の手で本を読む場合、単行本より文庫本の方が、楽である。

②本棚のスペースを取らない

 ①と同様、小さいことのメリットとして、文庫本は場所を取らない。同じ書棚のスペースであれば、単行本より多くの本を並べることができる。

③単行本より安価

 昨今は文庫本であっても、千円を超えるものも珍しくないが、それでも単行本に比べて安価である。この差額でコーヒー一杯が飲める。

④「解説」があること

 文庫本の巻末には「解説」があり、作品を読んだ後に解説を読むという、プラスαの愉しみがある。

 文庫本に解説が付いている理由は、文庫本のそもそもの目的が「万人の必読すべき真に古典的価値ある書を(後略)」、「古今東西の不朽の典籍を(中略)、多くのひとびとに提供」という岩波茂雄や角川源義の言葉にあるように、それまで一部の教養人の読み物であった文学作品を、一般大衆にも読んで貰うために発刊されたものである。解説は、そうした読者が作品を理解するための手助けとして設けられたという。かつて旺文社文庫というレーベルがあったが、同文庫の解説などは、まるで教科書のように充実していた。

 以上が文庫本の魅力であるが、筆者にとっては四番目に述べたことが最大の魅力である。