お気に入りの梅田の書店

 大阪・梅田にある代表的な書店と言えば、阪急三番街にある紀伊国屋書店であろう。同店の右側入口横にある大型スクリーン(BIGMAN)は、昔も今も待ち合わせのランドマークである。

 紀伊国屋書店とライバル関係にあったのが、御堂筋東側の曾根崎にあった旭屋書店・本店。紀伊国屋書店がワンフロア―で平面に広かったのに対して、旭屋書店はビルの7フロアで構成された縦型の書店だった。フロア毎に性格付がされ、軍事や鉄道関係に強みがあり、7階には〝マッハ〟という鉄道模型店も入っていた旭屋書店の方が筆者には好みだった。しかし、ビルの老朽に伴い、筆者の知らない2011年12月31日に同店は閉店してしまった。筆者の学生時代から長い期間、紀伊国屋書店と旭屋書店は梅田にある大型書店の二枚看板だっただけに、片方が舞台から退場してしまうと一抹の淋しさを感じる。

 旭屋書店に代わって、今日、紀伊国屋書店とライバル関係にある梅田の大型書店と言えば、ジュンク堂書店であろう。筆者の勤め先が四ツ橋筋沿いにあることも関係してか、社会人になってからは、紀伊国屋書店や旭屋書店よりも、堂島アバンザにあるジュンク堂書店・大阪本店へ足しげく通うようになった。同店はアバンザビルに入居する2フロア(2階と3階)で構成された書店で、蔵書数は紀伊国屋書店の方がやや多い(紀伊国屋書店の蔵書数は約100万冊。ジュンク堂書店・大阪本店の蔵書数は約80万冊)のだが、棚の分類や配列が効いているのか、筆者には感覚的には紀伊国屋書店よりも多く感じ、また、書籍も探しやすい。

 もっとも、梅田で最大の蔵書数を持つ書店は、茶屋町にあるMARUZEN&ジュンク堂書店・梅田店である。同店は建築家の安藤忠雄が設計した「チャスカ茶屋町」ビルの地下1階から地上7階までを占める、売り場面積2060坪、蔵書数200万冊を誇る国内最大級のメガ書店だ。(ちなみに、紀伊国屋書店の売り場面積は900坪。ジュンク堂書店・大阪本店の売り場面積は1200坪)しかし、こうも広いと、「何か面白そうな本はないかと」と漠とした動機で行くと、却って使い勝手が悪い。この書店は、求めている書籍が他のどの書店にも置いていない場合の、最後の砦として訪れることにしている。蔵書数が200万冊もあれば、絶版や品切れでない限り、大概の書籍は置いている。

 そして、もう一つ忘れてならないのが、ルクア イーレ 9階にある梅田蔦屋書店(売り場面積は900坪、蔵書数は約100万冊)。この書店の面白いところは書棚が回廊式になっていることで、円の中心部にカフェが据え付けられている。また、書籍の並べ方もユニーク。一般の書店の場合、文庫本や新書は同じ出版社単位で並べられているが、蔦屋書店(梅田店に限らず)の場合、テーマ又は分野単位で並べられている。たとえば、新潮文庫版の『華麗なるギャツビー』(フィッツジェラルド著)の横に他社文庫の同じ作品が並んでいるだけでなく、フィッツジェラルドではない別のアメリカ人作家による同じ時代背景を描いた単行本(文庫本ではなく)も並んでいる。書棚の見た目は不揃いであるが、これによって予期していない本に出合う可能性があるのだ。

 以上、筆者のお気に入りの梅田の書店について述べたが、筆者の中では次のような棲み分けになる。

 じっくり時間をかけて本を探す場合はジュンク堂書店・大阪本店。予期していない面白本に出合いたい場合は梅田蔦屋書店。探している本がどこにもなく、最後の砦として訪れるのがMARUZEN&ジュンク堂書店・梅田店となる。

 さて、今週末の土曜日、どの書店へ足を運ぼうか。