紅白歌合戦に物申す

 昨年末の紅白歌合戦の平均視聴率は35.3%。過去最低だった前年の34.3%から1ポイント数字を上げたものの、歴代ワースト2位という結果だった。

 かつて国民番組だった紅白歌合戦。しかし、年々視聴者離れを起こしている。番組制作陣は何とかそれに歯止めをかけようと色々と工夫をこらしているのだが、筆者には迷走しているようにしか思えない。

 出場者の顔ぶれを見ても、半分以上がカタカナ名のグループ。昭和生まれのおじさん世代には馴染みがない歌い手ばかりだ。最も紅白離れしているといわれる若者世代を惹き込もうとしたものであろうが、今の若者はテレビよりYouTubeやSNSなどを観ているので、残念ながら制作陣の思惑通りには至っていない。逆に若者の歓心を買おうとしたあまり、テレビを一番よく見ている高齢者層からもそっぽを向けられるしまつ。さらに、「なんで私が?」と本人も驚いたように、ここ最近、全く活躍していなかった歌手を起用するなど、番組制作陣の意図とは逆に益々泥沼に入っているようだ。そのため、「もはや自分たちの舞台でない」と感じたのか、ある大物演歌歌手は2013年大晦日の第64回歌合戦を最後に自ら出場を辞退(卒業)してしまった。

 筆者が小学生だった1970年代の紅白歌合戦は、お茶の間のテレビの前で家族揃って観る大晦日の国民行事(視聴率も70%を超える驚異的なものだった)だった。出場者もその年に活躍した歌い手が中心だったし、歌い手にとっても紅白に出場することが何よりのステータスであり、歌手人生の到達点だった。

 当時はインターネットなどなく、テレビかラジオでしか歌番組を楽しめなかった。しかもテレビは一家に一台。家族それぞれが自分の部屋で好きな物を観ることはなかった。翻って現代はインターネットが発達し、家族それぞれが自分の好きな場所で自分の好きなコンテンツを楽しめる時代である。

 当時と社会環境が異なってしまったので、かつての華やかなりし頃の紅白歌合戦を復活させることは、もはや不可能である。ならば、従来のイメージを捨て去り、多様化した時代に合わせた、新しい形の紅白を目指すべきだ。(今の制作陣もそう考えていると思うが、筆者からみると、まだ完全に割り切れていないように思える)

 歴代ワースト2位だった今回の紅白歌合戦であるが、それでも桑田佳祐、佐野元春、世良公則、Char、野口五郎ら〝同級生バンド〟による「時代遅れのRock’n’Roll Band」は、筆者の心を熱くとらえた。このように部分・部分では、各世代に受け入れられるものがあるので、それぞれの世代に合うメニューを用意すればよい。

 現在は一部と二部の二つだけだが、子ども、若者、おじさん、おばさん、老人など細かくパートに分け、各世代で支持の高い(しかも、その年に活躍した)歌い手に出場して貰う。そして、最後に出場者全員で男女問わず全ての世代から支持されているような歌(例えば、美空ひばりの「川の流れのように」や一青窈の「ハナミズキ」など?)をコーラスするのは如何なものであろうか。

 これが筆者の見た紅白歌合戦の初夢である。