創元推理文庫のジャンルマーク

 40代以上の本(特にミステリ)好きの方なら覚えておられると思うが、かつて創元推理文庫の背表紙には、ジャンル毎に次のようなマークが記されていた。

*探偵の横顔マーク→本格推理小説

*拳銃マーク→ハードボイルド、警察小説

*猫マーク→サスペンス・スリラー、スパイ小説

*時計の文字盤マーク→法廷、倒叙もの

*帆船マーク→怪奇・冒険もの

 同文庫創刊時の1959年から、このジャンル・マークで作品が分類されていたのだが、1991年に廃止されている。

 1950~60年代の文庫本は、創元推理文庫に限らず、どの本もカバーなど付いておらず、半透明のパラフィン紙が巻き付けられていた。従て、外観はどれも本の地肌色である薄茶色。腰のハカマに題名と著者名が記されていたのだが、そんなとき、ジャンルが一目でわかるこのマークが役立たった。70年代になると、カバーが付くようになるが、現在のような派手なものではなく、白地を基調とした抽象的なデザインだったので、依然として、このマークが役立った。ところが、現在のように文庫本のカバーが具象的になり、また作品も多様化すると、従来のジャンル・マークによるカテゴライズが適しなくなったようだ。現在、創元推理文庫の背表紙は色によって、次のように分類されている。

*ピンク→女性作家

*茶色→英国作家

*緑色→本格ミステリ、ユーモアなど

*青色→警察小説、ハードボイルド、冒険小説など

*黄色→日本人作家のミステリ

*灰色→ファンタジイ、ホラー

*藤色→創元SF文庫

 しかしながら、筆者にはミステリの一般的な分類に則した、かつてのジャンル・マークの方がしっくりする。本を探すとき、本格推理小説が好きな人なら、探偵の横顔マークが付いた中から、また、ハードボイルドが好きな人なら、拳銃マークの中から等々、その人の嗜好に合った作品群が一目で分かったからだ。だから、今も、筆者は、古書店や古本市で創元推理文庫が並んでいるのを見ると、真っ先に、猫マーク付いた作品から手に取っている。