古本の二つの入手方法

 古本を求める場合、現代はインターネットで簡単に入手することができる。インターネットの検索窓に作品のタイトルと著者名を打ち込めば、たちどころに、Amazonをはじめ、古本を扱うサイトで目当ての本がヒットされる。

 筆者が学生時代だった1980年代前半はインターネットなどなく、古本屋の店頭で探さねばならなかった。しかし、これが容易なことではない。

 大型の新古書チェーン店である「BOOKOFF」は別として、たいがいの古本屋の店内は大変狭い。書棚と書棚の間隔は、辛うじて人がすれ違える程度。先客かいると、そのあたりの書棚を見ることは難しい。筆者が見る棚は、主に外国作家の文庫本が並ぶ一角だが、基本的に置いている作品数が少ない。逆にある程度、揃えている場合は、スペースが手狭なため、正面の書棚だけでなく、平台に置かれた木箱(あるいはコンテナボックスなど)の中にも、背表紙を上にして並べられているが、それでも収まりきらない本が、その上に無造作に積み重ねられている。そうなると、それら平積み本のかたまりを一冊一冊チェックし、それが終わるごとに移動させて、その下に隠れている背表紙のタイトルを確認していくことになる。そして、そうした苦労(決して、苦痛ではないのだが)をしながら探しても、目当ての本がみつかる確率は(メジャーな作品は別として)極めて低い。一体に古本屋で目当ての本に巡りあうのは、僥倖に等しいといってもよかろう。

 その点、インターネットであれば、目当ての本をピンポイントで探し求めることができる。しかしながら、それ以外の本は目に入らない。

 一方、古本屋の書棚で探す場合、目当ての本を探す過程で、否応なしに他の本も目に入るので、予期していない面白い本と出会う可能性がある。この〝予期せぬ偶然の出会い〟というのが、古本屋で探すことの最大の魅力、効能であろう。

 このホームページで紹介しているR・ライト・キャンベルの『すわって待っていたスパイ』などは、まさにその好例。この作品は、ある古本まつりの会場で、何列も並ぶ書棚を一列ずつ端から端まで、ローラー作戦のようにして、そこに並ぶ背表紙を目で追っていたときに、タイトルに惹かれて、手に取ったものである。それまで、この作品(当然、作者も)が存在することすら知らなかった。

 そういうわけで、筆者はピンポントで本を求める場合はインターネットで、一方、まだ見知らぬ、第二・第三の『すわって待っていたスパイ』のような、隠れた名作との出会いを求める場合は、古本まつりへ足を運んでいる。