2026.4.12 泣ける小説

 最近〝泣ける小説〟に嵌っている。きっかけは、山田太一の『異人たちとの夏』。ホラー小説のブックガイド(『怖い話名著88』朝宮運河著)の中で、「両親とすき焼きの名店・今半を訪れるシーンは、涙なしには見られません」と大林宣彦監督の映画版についてコメントしていたので、原作本を読んでみた。小説を読んで泣くことはめったにないが(それは泣けるような小説をこれまで読んでこなかったことにもよる)、小説の方も、しだいにぼやけて消えいく両親との別離のこの場面で、やはり涙が出そうになった。

 映画を観たり、小説を読んだりして泣くと不思議と気持ちがよい。それは泣くことによって心身がリラックスし、ストレスから解放され、カタルシスを感じるからだという。ストレスの発散ならユーモア小説も効果がありそうだが、「笑う」ことよりも「泣く」ことの方が、一回あたりのストレス解消効果は高いそうだ。

 『異人たちとの夏』の次は、レイチェル・ジョイスの『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』(定年退職した65歳の男が、元同僚の女性が死に瀕しているという手紙を受け取り、1000キロの道を歩いて会いに行く物語)を読んだ。これの映画が上映されていたとき(2025年の春頃)に観に行くべきだったと非常に後悔している。

 浅田次郎の『天国までの百マイル』(事業に失敗し、家族も失った主人公が、心臓病で倒れた母を救うため、オンボロ車に母を乗せて、天才外科医がいるという、とある病院を目指す物語)に登場する主人公の恋人マリが書き残した置手紙には思わず涙がこぼれる。

 ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』(知的障害を持つ32歳の青年が、脳外科手術で天才的な知能を得るも、やがて副作用で急速に退行するという過酷な運命を日記形式[経過報告]で綴った物語)の、これまで世話になった先生や教師に別れを告げ、元の施設へ戻っていくラスト数ページは涙なしに読めなかった。

 今は角田光代の『八日目の蝉』(不倫相手の赤ん坊を衝動的に奪って「薫」と名付け、自分の子として4年間、育てる逃亡劇)を読んでするところである。

 さらに、その後は、偶然、ネット検索で知ったミッチ・アルボムの『もう一日 for one more day』(人生に挫折し自殺を試みた主人公が、死んだ母親と一日再会する物語)を読む予定である。

 泣ける小説にはカタルシスが味わえるという効用の他、ミステリー、スパイ小説、歴史小説ばかり読んでいた筆者にとって、読むことがなかったであろう名作(『アルジャーノンに花束を』や『八日目の蝉』など)に出会えるという効用もある。